• 全ての始まり

遡ること3年と半年、初めて加入したブロードバンド回線におまけでついていたインストールCDが、リネを始めるきっかけでした。初めはMMO自体が全く理解できておらず、最初のうちは、本当に何もかもが手探りの状態で、リネを開始してからの半年間は、延々リザ砂漠を、弓を担いで歩きまわっていました。


3年前のある日のことです。狩りのベースとしていたWB村から、いつもの通り犬を引き出して、狩りにでかけようとしたら、妙にはっきりとした断定口調の一人のプリさんに声をかけられました。それまでの半年間は、ほぼ誰とも会話することなく、プレステとかの延長として黙々とモンスの相手をしているだけの状況でしたが、そのプリさんは、「まだまだこれからのクランだけど、一緒に協力して城を取らないか?」などと夢のような話を熱い口調で語りかけてきます。それが、朱雀さまと、そしてNobleangelsとの出会いでした。

  • 初期

その頃のNobleangelsの看板ナイトは梵天丸さんといい、何人がかりで斬りかかっても全く相手にならないという噂を耳にする、ピストルマークをつけた恐ろしげな一団と繋がりがある人、みたいなことを聞いていました。そんな話を聞いて、もうそれだけでMMO初心者の自分はその梵天丸さんの格好よさに夢中になってしまいました。しかし、そんな日々も長くは続かず、まもなく諸般の事情でその方はNobleangelsを永久に脱退してしまいました。その方の引退時、クラン員全員に宛てて送られた便箋は、今でも自分の中で一番大切な宝物です。

このことをきっかけにして、Nobleangelsに城を取らせるために少しでも強りたいんだ、という明確なリネの中での目標ができました。

  • 中期

Nobleangelsで城を取る、それだけを目標に黙々と狩りは続きました。少しでも装備を強化するため、毎晩朝まで延々とDVでドレ待ちをして、一晩で100k前後のアデナをチビチビチビチビ稼いで、ようやくOE1周目を終え、2周目に突入することができました。またそれ以外の時間は、オーガの血欲しさに延々オーガ狩りを続けました。そんな作業を黙々とこなすために、NobleangelsのクランHP内に「目指せオーガ2000匹!」みたいなタイトルの日記を1年近くにわたって書き続けたりもしました。


そんな自分自身、そしてクラン全体の支えとなったのが、看板ナイトであったくりふと団長でした。本当に楽しい日々でした。戦争で勝つことはできませんでしたが、ささやかな喜びに溢れる日々でした。しかし、やはりそんな日々は長続きすることは無く、いりふと団長も引退していきました。くりふと団長の熱い想いに感化された自分は、Nobleangelsのために戦争をする、という姿勢から、戦争そのものを楽しみたいという姿勢に変わっていきました。そして、とうとうその想いが達成される日がやってきました。あの自分のリネ歴の中で一番熱かった晩のことは、朱雀様の言葉を借りることにしたいと思います。





(朱雀さま記念館旧NA戦記より抜粋 参照http://page.freett.com/nobleangels/)


03年新春。WW城に対する最初の本格攻勢は内門前のナの国の防衛陣地の前に潰えた、この敗北から着想を得た新しい作戦を試してみることにした。城の外へ出してもらえないのであれば、逆に城の中にこちらが布陣して敵も外へ出れないようにしてやろうという、敵の戦術の逆用である。理屈上は効果的なものだったが、この作戦には恐ろしいリスクがあった。敵の城のただ中へ布陣してそこで防戦をずっと続けなければならないのだ。飛んだら戻れないため補充はできない。。すべての物資が尽きるまでは帰還せずにランテレで危険を回避しつつ、ひたすら修羅の如く戦う、肉を斬らせて骨を断つ覚悟での玉砕戦術である。


これら幾つかの制約のため、NA内で注げる限りの戦力がWWCの崖(リスタポイント)に配置された。NAに入ったばかりの初心者まで、CPや矢などの戦需物資を城内へ運ぶためだけに駆り出された。まさしくクランの持てる国力をすべてをあげての総力戦である。果たしてこの作戦は通用するのだろうか?


当日。分刻みの作戦スケジュールどおりに、崖から戦力を一斉に展開し、一路、城へと続く階段を目指してWWCへNAメンバー50人あまりが突入。当然、この日にケイブアタックを仕掛けることはナの国に察知されている。彼らがどんな策でどこに待ち構えているのかわからない。WWCを駆けていくるNAメンバーたちは皆、不安と緊張で心臓が踊っていたに違いない。何故か洞窟内にバジリスクが放されていたが、それ以外の抵抗はなく、無事に階段へ到着する。ここからが本番だ。迅速に戦力を城内へ移動させるために階段をあがった者から次々にランダムテレポートで散っていく。散ったメンバーはそのままは内門前に布陣するために指示された箇所に続々と集まっていく。数分で倉庫のまわりと内門前に50名で構成された“阻止陣地”が完成した。


敵はどれほどの時間でこちらの意図に気づいたのだろうか。最初は梨園の門特攻で帰還してきた数名がうろうろしてはNAの遊撃に飛ばされていた。そして・・、しばらくすると、こちらの意図を察したのか1人から数人でまとまり、こちらの阻止陣地に突撃をはじめた。無理やりにでも何とか庭へ出ようとするのだった。ここから、今まで見たことのないような凄惨な光景が展開されていくことになる。敢然と突撃するもNAの弓の集中射撃により内門の前に辿りついたところで力尽きたように死ぬナのクラン員。NAのボックスを避けようとしてランテレを連打し、城内をノミのように跳ね回った後に結局死ぬ者。単独で先行しすぎて死ぬNA。死んでリスタートしてしまうとNAは再び城内に戻ることができないため、死ぬ→蘇生してもらう、を何度も繰り返して悪鬼のように戦い続ける者もいた。


こんな戦いをどれくらい続けただろう。城内のナのクラン員も増えてきて、城内戦闘がいよいよ熾烈さを増してきた時、梨姫から「城門突破せり」のwisが届く。満身創痍で戦いを続けるNAを励ますためにおれは「梨が門を抜いたぞ!頑張れ!!」と叫んだ。そして、その数分後に全員飛ばされる。ついにナの国のWW城が落城したのだ!最初にとったのは無名のダッシュクランだったが、すぐに落城。次にとったのが「梨園遊撃隊」。作戦通りだ。あとは譲渡してもらうための第二波を崖から出撃させ、無事に梨の制圧下の城内へ入る。


先ほどまで苛烈な戦闘があったところをもう一度、梨のメンバーの笑顔に迎えられて入る・・。が、このとき、おれのPCに突如バグが発生してチャット入力ができないという予想外のアクシデントに見舞われた。キーボードを叩くと画面が最小化してしまうのだ。クリックして歩くことしかできない。ここまで来たのに、まさか・・・冷や汗がどっと吹き出してきた。なんとかタワーまで辿り着いたが、何も答えられない、指示も出せない。


梨姫は状況を察したのか、「そのままタワーの前で待機しておいてください、」と言い残して、WW城の防衛の指揮に当たる。タワー周辺にはCOIを来た敵や、周囲を走り回る数人の敵残存兵力が、隙を見つけては接近してタワーを叩いていた。やがてタワー倒壊。しかし梨とNAのメンバーでタワー周囲はがっちり固められており、COIプリがいる気配も見受けられなかった。おれの目の前でクラウンが回っている。勝ったと思った。


戦争終了数分前。譲渡のため、NAのメンバーはタワーを離れて門前へ。譲渡1秒前。さあクラウンを取・・・あれ?クラウンを今まさに手に取ろうとした瞬間、何故かおれは城外へ飛ばされていた。何が起こった・・?あわててログを見る。「よくもクリリンを血盟が梨園遊撃隊血盟に〜」・・・そこには見たことも聞いたこともないクランが梨園遊撃隊に勝利したとある。放心脱力・・。何が何だかわからないが、味方以外の者に取られたのは確かだ。この日の壮絶な戦いがすべて水の泡になったのも確かだ。


敗戦。ハイネ城へ挨拶へ向かう途中で、遊撃に出ていてくれたぐるまき♪の真樹さんが「今日は惜しかったね」と声をかけてくれた。が、緊張の連続の末、理解不能な敗北を喫したおれにはそれに答える気力はもう残っていなかった・・・。


この戦争から1年ほどたったある日、あるクラン員が「俺にとってはあの日の戦いがリネージュの頂点だった。あれほど熱い戦いは以後なかった。あの日の戦いが終わった時、本当は俺のリネージュも終わっていたのかもしれない」と言い残し、引退していったが、この日の戦争は、WW城の廊下で敵味方双方が互いに惜しみなく命を削りあった本当に激烈な戦いだった。また、恐怖、戦慄、白熱、感謝、歓喜、勝利、驚愕、敗北、失意、をわずか2時間で味わうことのできた、非常に目まぐるしくドラマチックな展開の戦争だった。


この日、自分はもう一人のナイトさんとともに自ら志願し、最も過酷な部署への配置を願い出、文字通り数えられない程ENDし、そのたびごとに仲間にRESしてもらい、戦いつづけました。そして、この戦争の後、これ以上のものをリネで得ることはできないだろうという満足感と虚脱感の中、Nobleangelsにもしものことがあったとき、すぐにかけつけられるだけの蓄えを残して、リネを休止しました。